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10月のインタビュー 選択肢はひとつじゃない。愉快な選択肢を広げる発明家登場!「私のライフワークは発明。それによって愉しい選択肢を皆さんに提案していくことです。」
インタビュー (株)発明工房 代表取締役会長 藤村 靖之さん
藤村さんが発明した非電化製品は、非電化冷蔵庫、非電化掃除機、非電化除湿器、非電化換気装置・・・と何十種類もあるのだが(詳しくは本『愉しい非電化』洋泉社)特に『電気を使わなくても冷える冷蔵庫』には驚きである。

原理はいたって簡単。

冷蔵庫に入れるもの(貯蔵物)の熱は外に逃がしてやり、逆に外からの熱は遮断する。そうすれば晴天の夜が3日に1日以上あれば、真夏の昼でも庫内を7〜8℃くらいに維持できる仕組みだ。

現在、この冷蔵庫をモンゴルの遊牧民に羊2頭分(現物)で販売する計画が進んでいる。

「現地の企業家が作って遊牧民が買うーそのほうがモンゴルの文化も産業も環境も壊されなくていい、発明の権利はただで差し上げるという提案をして歓迎されました」

藤村さんには消費者の立場に立った発想と、それを商品として売り出すビジネスモデルがある。それは従来の『企業が儲ける』スタイルのものとは全く違う、新しいビジネスモデルだ。その背景にある「本当のビジネスの考え方」は見逃せない。

「お客に価値が生まれれば(それが価格よりうんと高ければ)、CMなんかいらない。企業にお金を運んでくれる。または、価格が経費・原価よりうんと高ければ企業に利益はくる。
しかし客に価値が生まれ、企業に利益がくるのがビジネスです。商品に価値を高め、それに比べて安い価格を設定するのが本当のビジネスなんです」

それはモンゴルにおいても然りだ。

「水が買えないぐらいですから、羊2頭分(現物)でしか買えないんです。その経費と原価で創るのがビジネスの原点になり、それには知恵が必要です。お客にどういう価値を生じさせるか、そして企業はどう利益を生んでいくかというのがビジネスです。従業員にメシを食わすことがビジネスではありません」
月に2回開校される「発明起業塾(詳しくはhttp://www.qol-online.jp/kigyouzyuku/)」では、藤村さん独特の講義を聞くことができる。
「どうせなら何かいいことをしたい」という気持で集まってきた塾生達に
「何の為に発明するのか、起業するのか」を自問させ、まずいいことを楽しくやっていくのに必要なことを教えていく。

それは

○ いいこと
○ 好きなこと
○ 生計が立つこと

講義中は、藤村さんの冗談と塾生の笑い声が絶えない。
企業経営のノウハウも教えてくれて、卒業生の7割が企業経営者になっているそうだ。
そんな藤村さんの経緯はというと、もともとは大手企業の熱工学研究室長として第一線に立って活躍していた。
しかし39才の
時、環境の良い場所で大切に育てていたつもりの息子がアレルギー喘息にかかったのをきっかけに会社を辞めてしまう。
その時の一番のテーマは、『息子の喘息をなんとかしてあげたい』。
それが愛情の対象が広がって、喘息の子供をなんとかしてあげたいに変わった。

日本の3%の子供達、数にしたら全国で30万人が喘息の事実の中、藤村さんは、免疫学の勉強を始める。

「その結果わかったのは、『喘息はアレルギーの一種で直らない。でも発作をおこさないようにはできる。それにはアレルゲンが体に入らないようにする、もうひとつは入っても発作が起こらないようにする』でした」

藤村さんはカンキョーという名の会社を起こした。発明した「クリアベール」という空気清浄機により、4人のうち3人の子供の発作がおさまった。これは画期的なことで、1台2万円の機械が口コミで世界中に250万台広がった。『発明起業家藤村』の誕生だった。

当時を振り返りながら
「今はいい時代になったね」
としみじみ語る藤村さん。
テレビのニュースを見ていると、けっしてそうとは思えないが、発明家は視点が違う?
「今、いろんなことが素直にできるいい時代になってきた」

過去を回想する時、藤村さんの表情は少し厳しい。
「70年代は、高度経済成長で企業の意欲、消費者、商業主義の過剰な部分が露出して、世が暴走して止まらなくなってしまった。もうければ何だっていいという時代でした。
それが21世紀に入って、いろいろなことが素直に起こり始めた。100万人のキャンドルナイト(夏至の夜に電気を消してロウソクを灯そうというムーブメント)、この時、500万人の人が電気を消したんです。時代はすごいなーと思いました。500万人の人が今のままじゃいけない、自分も積極的に何かに取組まなきゃって思っているんです。情報の発達した21世紀には、こういうことができるんだなあ、インターネットの普及はこういうことだと思いました」

藤村さんはその時、何十年も連絡をとっていない岩手の友人に(キャンドルナイトで岩手エリアの参加者が少ないことが気になったので参加してもらおうと思い)メールをだした。

「メールなら何十年ぶりでも「こんにちは」でいい。手紙は書けないですよ」
このような催しは藤村さんの時代には考えられないことだという。

「20年前というのは、インターネットもNGOもなかったし前近代国家ですよ。人を動かすのに『権力』『金力』『有名になる』ということしかありませんでした。どうしたら人より早く金持ちになれるかを皆考えていた。そういう時代が千年以上続いたんです。日本の急速な変化で今はいい時代になりました。一人一人が自分のやりたいことを発揮していける。今は『共感』がエネルギーを持つ。
私たちの時代は、自分ひとりではこんなちっぽけな存在で何もできなかったけど、これからは希望がある。今の人はいいですねえ。生まれてくるのが20年早かったなあ。長生きすればいいか。こういう面白い時代は楽しまなきゃ」
藤村さんは、未来をこう考える。
「私たちは、旧世代のエコロジー派で「人類はもうダメだ」と思っていた。それで無気力になった。7代先にダメになるのが悲観的な見方、楽観的なのは20代先まではもつというのですが、ダメというのはおんなじです。それが、インターネットの普及、若い人の共感、音楽、そういう力を見ているうち、まんざら捨てたもんじゃない、アウトじゃないかもよ、って光明がみえてきた。これからは女性と若い人が力をふるえるように、おじさんはひっぱる役割と、役割交換していった方がいいんじゃないですかね」

また、物質社会についてこう語る。

「高度経済成長で、企業が儲けろ!という経済至上主義が生まれてしまったわけですが、儲けるために悪い商品を作っても、それを自分の子供には与えないでしょう。自分の子供だけじゃなく愛情は遠くにとばしたい。広げたい。そういう気持が大切だと思います」

そして高度経済成長社会の反省点を3つ挙げた。

・ 循環の思想の欠如
「商品の作りっぱなし」
・ 罪を感じる感性の欠如
「自分の快楽ばかりで人の痛みを感じる感性の欠如」
・ 人間は完全ではないという感性の欠如
「不完全だという前提で謙虚にならないといけません」

じつは、高度経済成長で活躍した人々は、これらの反省点をわかっているのだと藤村さんは言う。

「3つの欠如を今度は欠如しないように、社会を組み立て直せばいいのかとおじさん達は反省しているのに、残念なのは今のやり方を止めようがないんです」

そして藤村さんの核となりうる倫理観が姿を表す。

「それは別の選択肢がないから。知性とは、知的な生活とは、選択肢をたくさん用意して、自分の意思で選択肢を選んでいく生き方です。常に別の選択肢を用意しながら選んでいけるよう、世の中を組み立て直さなければいけない。倫理観や生活スタイルが選べるように、愉しくていいことができるように」
『新しい愉しい選択肢を提案してあげること』
それが藤村さんの原点である。
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