田舎暮らしといえば、「スローライフ」。
田舎でのスローライフを、文字どうりスローに、スマートに楽しんでいる方々も世の中には多いようですが、どういう訳だか我が家の里山生活はやるべきことが次々と押し寄せて来るので、なかなか「スロー」とは行きません。
草が伸びてきたから草を刈り、梅が実ったから加工する、というように今はいろいろな事を受け身の状態でこなしているからかもしれません。
さて、敷地内に何本もある梅の木が、今年もたくさん実をつけました。
 昨年は、次から次から落ちてくる梅の実で子ども達といろいろな遊びをしましたが、今年はそんな余裕は何処へやら…。実は大人の頭の中は梅干作りの事でいっぱいだったのです。
もうちょっと実が大きくなったら…、と思っているうちに青梅の時期が過ぎ、気が付くと少し黄色くなった実がポトリポトリと落ち始めました。それに急かされるようにして、7月初め、梅の実を収穫しました。
昨年は、手の届く範囲で一粒一粒ちまちまと収穫したのですが、今年は近所のおじいちゃんに教わったダイナミックな方法で一攫千金(?)を狙います。
木の下にブルーシートを広げ、竹林から切り出してきた長い竹で、実の付いた枝をゆさゆさと揺らします。それで実が落ちなければ、今度は枝をバシバシたたいて実を落とします。
「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」と言うように、梅の木は多少枝が折れても心配ないばかりか、かえってしっかり剪定したほうが翌年の花付きが良くなるというくらいなので、かなり大胆に木を揺らし、実をたたき落としました。
この方法はとても効率がよかったので、調子に乗って敷地内に何本も植えられている梅の木のうち、作業しやすそうな4本から実を収穫しました。
落とした実はひとまず軽トラの荷台に集めて選別します。思いのほかたくさん収穫できたので、割れたり傷のついた実を容赦なくはじいていきます。心を鬼にして相当はじいたつもりでしたが、最終的には50キロ近い梅が残っていました。
この時点で、梅の実の多さにちょっとひるんだものの、そこは乗りかかった船。せっかく集めた梅の実を無駄にしないよう、最後まできちんと加工しなければ申し訳ないと思い、用意した30リットルの容器二つに入る限りを梅干しに、残りは梅シロップに加工する事にしました。
「敷地内の梅の木に、時期が来るとたくさんの実がなる」と言う現実があり、「せっかく実った梅をみすみす無駄にする手はない」という考えと「自家製の梅干が食べたい」と言う気持ちがあり、「梅干作りも里山暮らしの楽しみのうち」と言いながら始めたはずでしたが、集まった梅の実のあまりの多さに途中からは義務感の方が勝ってしまい、夫婦二人でただ黙々と「作業」をする事になってしまいました。
梅の実を洗って拭いてなり口の小枝を取って塩で漬ける…、の作業がやってもやっても終わりません。日が暮れて夕食の時間になっても終わらない梅の実の下処理に、最後は強迫観念に駆られる始末。どうやら、作業効率をよく考え、省略できる工程は省き、手を抜くところはどんどん手を抜くと言うのが少人数で大量の作物を加工するコツのようです。
梅の実を木から叩き落とすと言うやり方もそのひとつですが、水で洗った実はいちいち拭かなくても、ザルに上げてしばらく風にあてておけば自然に乾いてしまうのでとても楽。なり口の小枝だって、わざわざ取るのは時間がかかって大変だから、そのまま梅干しにしてしまえばいいという考え方。
「そんなのいちいち取んないよ。売り物じゃないんだから。」と近所のおばあちゃん。小枝をつけたままだと苦味が出ると本には書いてありますが、昨年ご近所から頂いた梅干しは、家庭によって少しづつ味の違いがあるにせよ、どれも本当に美味しくて、苦味なんて全然気になりませんでした。
何事もダイナミック。
確かにそうでもしないと、とてもやっていけないなぁと思います。
次回作るときにはもうちょっと「楽に、たくさん」を考えて取り組んでみようと思いました。もっとも、梅の実はたぶん毎年取れるので、今年取れた分をすべて加工しなくても、一年程度で消費出来る分だけ加工するようにすればいいだけの話なのかもしれません。40キロの梅干は、家族5人の一年分どころか、全部消費するのにいったい何年かかるでしょう…。どう考えても多すぎます。
ここの暮らしで発生するさまざまな作業を「楽しみ」の範疇に収めるためには、ある程度「節制する事」を心がけたほうがいいらしい、というのが今回の教訓です。
ただ、梅干や干し柿と言った保存食は、作った後も長く楽しめるものですし、それらが後々までもたらしてくれる幸せ感はやはり何物にも変えがたいと思うので、ついつい欲張ってたくさん作ってしまうのが我が家の現実なのかもしれません。
たくさん作っておけば、誰かに差し上げて食べていただく事も出来ます。それもまた楽しみの一つになりますし。とはいえ、仕事をしながら子育てしながら里山生活を楽しむためには「自分たちの身の丈にあった加減を知る」と言うのが、この里山を120%楽しみながら暮らしていくための極意(秘訣)なんじゃないかと思ってしまった一幕でした。
梅干しの作業は、梅雨が明けたら「土用干し」をして完了です。
今は先の幸せを思いながら、しっかり土用干しが出来るよう心の準備をしている所です。
何しろ自分たちにとっては半端じゃない量なので…(笑)。
あっという間の一年でしたが、二人のつたない文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。
このコラムでの連載は今月が最終回ですが、私たちの馬頭(現・那珂川町)での暮らしはこれからも続けていく予定です。自宅周辺の自然の様子や暮らしのひとコマなどをブログに(「野山であそぼっ」http://blog.livedoor.jp/hirocraft/
)綴っていますので、よろしかったらご覧ください。
|