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ライフスタイルコラム毎月1日更新 野山であそぼっ 廣田充伸・廣田美千香「東京から栃木の里山に移り住んだ家族の暮らし」を廣田さんが里山の馬頭町を舞台に、樹のやさしさや自然の豊かさ野山での遊びと共に、お届けします。※廣田充伸さん、廣田美千香さんによる隔月交代連載 その9
「山と人里とを結ぶ道、の話」 廣田充伸

 僕たちが住んでいる家の裏は人の住んでいない山と森です。つまり、ここは山と人里との境界線。海と陸の境界線としての海岸に建っている「海の家」で、波の音と陸の人の声が同時に聞こえるように、山の生き物や植物と、人の活動とのせめぎ合いが身近に感じられる所です。

 その象徴的な痕跡として、裏の栗林の奥に生い茂った篠竹の間に、ポッカリと大きく開いた獣道がありました。その大きさと、近所の方の畑での被害情報などから、イノシシが通っているようでした。イノシシにしてみれば、その出口は棲家としての山から食料豊富な田畑に直結するインターフェースの様なものなのでしょう。

 そんな獣道を、子どもと一緒に探検してみました。獣が作ったインターフェースを使って、逆に人の世界から森の世界に入ります。中に入ると、道はハッキリしなくなりましたが、いくつもの小さな獣道が縦横無尽にあり、そんな道を頼りに前へ進みます。

 すると直ぐに、篠竹の藪が無くなり広く開いた空間に出ました。そこには太い枝を広げた大きな古木が影を落としています。木の中心は、僕が入れるほど大きな空洞になっていましたが、緑の葉っぱを茂らせ、生命力を感じます。家のすぐ近くにこんな大木があったなんて、偶然の発見にとても嬉しくなりました。


 古木の発見を近所の人に話してまわったところ、「あれは樫の木で、うちの子どもが秘密基地にしていたんだよ」とか、「その古木があるくぼ地は水が出る所だったから、農業用水としてその水を利用していたんだよ」と、昔の思い出を語る声が聞こえてきて、なんだか、タイムカプセルを開いたような気分です。

 このあたりでは、昔、野菜の苗を育てる苗床を落ち葉と腐葉土で作り、その発酵熱を苗床の保温に利用していたそうです。
(詳しくはこちらをご覧下さい。「農家の一コマ」
http://blog.livedoor.jp/hirocraft/archives/50560102.html

 また、化学肥料が無かった時代、畑の肥料としても、そこでできた堆肥を利用していたそうです。どこの家でも家族総出で裏山の落ち葉さらいをして大量の落ち葉を集めていた、その結果、里と接する山には、人の手が入り、下草が刈り取られ、明るい雑木林になっていたそうです。今は、落ち葉を集める必要性がなくなったので、山を手入れする事も無くなり、篠竹が密生して中に入る事すらできにくくなった林も多くなりました。

 そこでまた、イノシシの話に戻ると、どうやら、そんな時代には、イノシシが里に降りてくることは少なかったそうなのです。人里周辺の山には人の手が入り、人間の気配を感じさせていた為、イノシシは山奥から里に降りる前に踏みとどまっていたのではないかと考える人もいます。つまり、山と人里との境界線には緩衝地帯があって、それが、動物と人が住み分ける為に役立っていたようなのです。

 また、その時代に子どもだった人たちに聞くと、よく子どもだけで山に入って遊んでいたので地形も知り尽くしていたそうです。それだけ、山も入りやすい環境だった様です。今は、子どもだけで山に入って遊んでいる話はほとんど聞きません。

 子ども時代に近くの山や川で遊んだ方々の話を聞くと、誰もが同じ様な原風景を持っておられ、故郷の自然に対する愛着も強く持って暮らしている事を感じます。住宅地の中で育った僕としては、とても羨ましく思います。
だから、このまま、子どもが山で遊ばず故郷の山の記憶を持たずに成長したら、大人になった時にこの故郷をどう想うようになるのか少なからず不安を感じるのです。ただ、子どもに強制するのではなく、子どもが自然にその土地を愛する事ができる様に、裏方として手伝う事ができれば…。
そうすることで、成人した子ども達が、例え便利さや仕事を求めて都市へ出て行ったとしても、この地の良さを再確認し再び戻ってくる原動力になるのでは。そして、その土地の自然のあるべき姿をお互い認識し、これからもこの美しい里山を引き継ぐ「力」となるのではないか。そんな風に思うのです。

 自分も楽しみつつ、できる事からやってみようと考え、最近、獣道を入り口にした、山の中へと続く道を作り始めました。刈払い機を使って、篠竹を倒して、人一人が通れるくらいのささやかな小道を山に向かって進めています。

「道」というものは、その大きさや目的によって、そこを通る人の自然に対する態度を変えてしまうと思います。獣道、徒歩、自転車、軽トラ1台分の小道、乗用車、ダンプカー…。通るものが大きくなるほど、「道」は大きく、移動速度は速く、そこの自然への理解は少ないまま通過する事になります。各地を歩いたり、自転車で走った経験から、僕としては、そこの自然を理解するのに丁度良い手段は自転車までだと思っています。きちっと整備された道ではなく、最低限の幅で、最低限の労力で作られた道。

 これから、この小道がどう発展するかわかりませんが、「けもの道」が森の中を縦横無尽に走っているように、この小道をきっかけとした「こども道」が縦横無尽に森の中に広がることを夢見て、少しづつ道を切り拓いています。

■関連HP
廣田さんが作られている作品をご覧になれます。
ヒロクラフト
 http://www.hirocraft.com

廣田さんご家族の里山での暮らしの日記です。
ブログ「野山であそぼっ」
 http://blog.livedoor.jp/hirocraft/

廣田さんが旅行したパタゴニアの自然を紹介しています。
旅の記録「風と氷河のパタゴニア」
 http://www.hirocraft.com/patagonia/

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