7月のある日、バケツを引っくり返した様な激しい雷雨が去った後、名残の雨がしとしと降る中、スコップ片手に雨合羽を着た10人程の男たちが、薄暗くなりかけたコナラ林の中の至る所で穴を掘り、何かを埋めていた。皆、勝手を知っているようで黙々と働いていたが、初めての僕は他の男たちのやり方を見ながら掘っていった。
そして、直径1m、深さ20cmほどの穴を掘り終えると、軽トラの荷台から降ろしたカップラーメン位の大きさの円柱状の塊を10個ほど、丁寧に置いて、静かに埋め戻した。まるで、見られてはいけない爆弾でも埋めているかのように・・・。
ではなくて、実はマイタケ栽培のための原木を埋めていたのです。地域の方々が、自分たちでマイタケを育て、収穫したらまいたけ祭りを開いて販売する会の活動なのです。この日は近所のHさんに誘っていただき、近くの山へ刈払機とサブロー(このあたりではスコップのことをサブローと言うそうです)を持って出かけ、下草刈の後にマイタケ菌を植え付けた原木を埋める作業でした。でも、その埋めたマイタケの原木は、ある意味で時限爆弾でした。
3ヶ月程たった10月のある日、Hさんから電話があり、マイタケが出たから次の土日にマイタケ祭りを行なうので参加して欲しいとの事。土曜の朝、出掛けてみると、出てます出てます。土の中から爆発する様に斜面のそこここにマイタケが花の様に開いていました。こんなに出てきて、今年は当たり年だそうです。なるべく大きな株のまま根本からそっと取り上げ、軽く落ち葉や土を払ってカゴに入れます。
マイタケという名は、「見つけたとき嬉しさのあまり舞ってしまうから舞茸」と聞いたことがあります。
一抱えもある大きな株を収穫した近所のYさんは、カメラを向けると普段見られないような満面の笑みを見せてくれました。これが本当の天然物だったら確かに舞ってしまうことでしょう。
一度原木を埋めると、3〜5年間は秋になるとマイタケが出るそうです。
これまでの仕事といえば、下草刈をして原木を埋めただけなのに、こんなに大きな収穫の喜びを味わえて、ただただ森の恵みに感謝するばかりです。3人で5分もするとマイタケで軽トラの荷台は一杯になって、周辺はマイタケ特有の豊かな香りに包まれました。
販売は近くの通称「そば道場」(そば打ち体験ができます)の東屋です。 新聞の紹介を見てたくさんの方々がマイタケに惹かれてやって来ました。僕も子ども達も売り子になってお客さんに手渡します。
スーパーで売られている屋内で育てられた物と違い、肉厚でエネルギーあふれるマイタケを前に、「そこの森から朝収穫したんですよ」と言うと、お客さんは感心したり喜んだり。売っている僕達も幸せな気持ちになります。
会の方々は、普段は兼業農家として、米はもちろんいろいろな作物を作って、日々、水の管理や、肥料の撒き具合など、手塩にかけていますが、このマイタケ栽培は、原木を埋めたら、お天道様次第で収量が変わるので、何も面倒くさい事は考えず、結果は天に任せて御気楽に栽培している様です。そして何より、皆さん生き生きとして、本当に楽しそうです。
朝一番に穫ったマイタケが少なくなると、再び山に行って補充します。今度は僕の息子も参加し、大物をゲットして来ました。こんな大きなマイタケを小学3年生の子どもが収穫するなんて、とても贅沢で幸せなヤツです。
自然の恵みを自分たちで採取し直接お客さんに届ける。
とてもシンプルで原始的な方法ですが、無駄な労力がかからない上、自然の豊かさが直接受け手にも伝わる行為だと思います。
僕達の木の物作りも、そんな風に自然の豊かさが伝えられたらと思っています。11月には「そば道場」で収穫したそばを使った、新そば祭りもあります。
これからも、季節を通じてたくさんの自然の恵みを感じながら生きていく事は、ここではあたりまえの事なのですが、都会から来た僕達にとってはとても幸せな事だと、つくづく思っています。
|