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トップページ > ライフスタイルコラム > バックナンバー手仕事のスピードで暮らそうよ その4
手仕事のスピードで暮らそうよ〜信州枕木の家から〜 「自然に調和して、気持ちよく暮らそう」 公害問題に関心の深い陶工、岡本さんが信州の小諸で手仕事の焼き物を行いながら語るエコロジカルなメッセージをお届けします。 その4
その4 自然を素材に自然へ還る、古くて新しい、手の仕事

猛暑の夏、秋の長雨と台風。毎年一度として同じ繰り返しのない自然の中で、今年もお米の収穫を無事に終え、安堵と共に豊かな気持ちに満たされています。

多くの人達が忘れてしまった、「無事」に感謝するひとときです。

つい一世代前まで、米の凶作が、文字どうり命取りだった事などはコンビニやスーパーに溢れんばかりの食料品を毎日目にする現在の暮らしからは想像もつきません。

バブルの時代に「どう、景気が良くて忙しいでしょう」とよく人に聞かれましたが、農業と同じように、自然を素材にした、筋肉労働である陶工(焼き物作りの職人)の仕事は、去年と同じものづくりを無事に終える繰り返しの中から、経験を積み重ねて少しづつ質を高めてゆく地道な仕事です。

そんな律儀で、使うほどに愛着の増す手仕事の素晴らしさに魅かれてこの道に入りました。32年も前の話です。

以来、生活に役立つ、飽きの来ない日用食器を作り続けてきましたが、時代と共に求められるものも変化します。

今、このコラムをお読み頂いているあなた。傍らにコーヒーカップなどありませんか。今年の春、「コーヒーをこぼして、書類はもとより、パソコンをパーにした」との話を聞いて、早速形にしたのが、写真の「パソコン・マグ」です。

思えば、かつて海や川が物流の要だった頃、日本には船徳利なる底が平らで安定した形の器がありました。また海運業が盛んなヨーロッパにも昔から、セーラー・マグがあったとも聞きました。 飲み物をこぼさぬ工夫は、我が先輩たちのテーマでもあったのです。

ところで、今も生命を拒否し続ける活火山・浅間山から私の仕事場までは直線で10KM。1783年、天明の大噴火は、その後数年にわたって大飢饉をもたらし、遠くはフランス革命勃発の引き金になったとの物語りも生んだようですが、この火山灰が八百万の神々が棲むという火山列島の森林や田畑を潤してきたと言う事を知っている人は多くはないようです。

それどころか現代社会ではただただ迷惑がられるばかり。

ならば、縄文びとの末裔たる自分ぐらいは、お山に畏敬の念を抱きつつ、この日の記憶を器に焼き付けておこうと思い、ぐい飲みを作ってみました。浅間の噴出物である灰を溶かしてガラス化してしまう窯の温度にも改めて感心しますが、鉄分の結晶がえもいわれぬ表情を醸し出す、「浅間降灰釉」の上品で力強い美しさに惚れ惚れし、仕事冥利を実感しています。

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